柿本朝臣人麻呂石見国より妻に別れて上り来る
    時の歌二首并に短歌(第二首)
つのさはふ 石見の海の 言さへく 韓の崎なる いくりにそ 深海松(ふかみる)お)ふる 荒磯にそ 玉藻は生ふる 玉藻なす 靡き寐し兒を 深海松の 深めて思へど さ寢し夜は いくだもあらず 這ふ蔓(つた)の 別れし来れば 肝向ふ 心を痛み 思ひつつ かへりみすれど 大船の 渡りの山の 黄葉の 散りの乱(まが)ひに 妹が袖 さやにも見えず 嬬隱(つまごも)る 屋上の〈一に云ふ 室上山(むろかみやま)〉山の 雲間より 渡らふ月の 惜しけども 隱ろひ来れば 天つたふ 入日さしぬれ 大夫と 思へるわれも 敷栲(しきたへ)の 衣の袖は 通りて濡れぬ         (巻二ー一三五)
     反歌二首
青駒の 足掻(あがき)を早み 雲居にそ 妹があたりを 過ぎて来にける〈一に云ふ、あたりは 隱り来にける〉                    (巻二ー一三六)
秋山に 落つる黄葉 しましくは な散り乱ひそ 妹があたり見む〈一に云ふ、散りな乱ひそ〉                                 (巻二ー一三七)

蔓(つた)

大阪市東淀川区で

楠に這い登ったつたの黄葉(奈良女子大学で)

東京駿河台で

天武天皇陵で