菅(すげ)

 其れより入り幸(い)でまして、走水(はしりみづ)の海を
渡りたまひし時、其の渡の神浪を興して、船を廻
(めぐ)らし
て得
(え)進み渡りたまはざりき。爾に其の后(きさき)、名は
弟橘比売
(おとたちばなひめの)命白したまひしく、「妾(あれ)
御子に易
(かは)りて海の中に入らむ。御子は遣はさえし
(まつりごと)を遂(と)げて覆奏したまふべし。」とまをして、
海に入りたまはむとする時に、
(すがだたみ)八重、皮疊
八重、絁
(きぬ)疊八重を波の上に敷きて、其の上に下(お)
坐しき。是に其の暴浪
(あらなみ)ら伏(な)ぎて、御船得
進みき。           (景行記 倭建命の東征)