桃

また後には、其の八はしらの雷神に、千五百(ちいほ)の黄泉軍(よもついくさ)を副(そ)へて追はしめき。爾に御佩(はか)せる十拳(とつか)劒を拔きて、後手(しりへで)にふきつつ逃げ来るを、猶追ひて、黄泉比良坂の坂本に到りし時、其の坂本に在る桃子(もものみ)三箇(みつ)を取りて、待ち撃(う)てば、ことごとに迯(に)げ返りき。爾に伊邪那岐(の)命、其の桃子(もものみ)に告(の)りたまひしく、「汝、吾を助けしが如く、葦原中国に有(あ)らゆるうつしき青人草(あをひとくさ)の、苦しき瀬に落ちて患(うれ)ひ惚(なや)む時、助くべし。」と告(の)りて、名を賜ひて意富加牟豆美(おほかむづみの)命と号ひき。(黄泉国からの逃走)