ふじの花

爾に其弟、兄の言ひしが如く、具(つぶ)さに其の母に白せば、即ち其の母、布遲葛(ふぢかづら)を取りて〈布遲の二字は音を以ゐよ。〉、一宿(ひとよ)の間に、衣褌(きぬはかま)また襪沓(したくつくつ)を織り縫ひ、亦弓矢を作りて、其の衣褌等(きぬはかまども)を服(き)せ、其の弓矢を取らしめて、其の孃子の家に遣はせば、其の衣服(きもの)また弓矢、悉に藤の花に成りき。是に其の春山之霞壯夫、其の弓矢を孃子の厠(かはや)に繋(か)けき。爾に伊豆志袁登賣、其の花を異(あや)しと思ひて、將(も)ち来る時に、其の孃子の後(しり)に立ちて、其の屋に入る即ち、婚(まぐは)ひしつ。     (応神記 伊豆志袁登賣)