萩(芽子=はぎ)

        花に寄す
春日野に 咲きたる萩は 片枝はいまだ 含
(ふふ)めり 言な絶えそね(巻七ー一三六三)
見まくほり 戀ひつつ待ちし 秋萩は 花のみ咲
きて 成らずかもあらむ    (巻七一三六四)
吾妹子が 屋前(やど)の秋萩 花よりは 実に
なりてこそ 戀ひ益りけれ (巻七ー一三六五)

    大宰帥大伴卿の歌二首
わが岡に さ男鹿来鳴く 初萩の 花嬬(はなづ
ま)問ひに 来鳴くさ男鹿  (巻八ー一五四一)
わが岡の 秋萩の花 風をいたみ 散るべくなり
ぬ 見む人もがも       (巻八ー一五四二)

    大伴宿禰家持の秋の歌三首
秋の野に 咲ける秋萩 秋風に 靡ける上に 秋
の露置けり           (巻八ー一五九七)
さ男鹿の 朝立つ野邊の 秋萩に 珠と見るまで
置ける白露           (巻八ー一五九八)
さ男鹿の 胸別にかも 秋萩の 散り過ぎにける
盛りかも去(い)ぬる     (巻八ー一五九九)
    右のものは、天平十五年癸未秋八月に、
    物色を見て作れるなり。

    弓削皇子の御歌一首
秋萩の 上に置きたる 白露の 消(け)かも死
なまし戀ひつつあらずは  (巻八ー一六〇八)