大根

 又続ぎて(仁徳天皇は)丸迩(わにの)臣口子(くちこ)を遣はして歌曰ひたまひしく、
  御諸の その高城(たかき)なる 大猪子が原
  大猪子が 腹にある 肝向ふ 心をだにか
  相思はずあらむ
とうたひたまひき。又歌曰(うた)ひたまひしく、
  つぎねふ 山代女の
  木鍬持ち 打ちし大根(おほね) 
  根白の 白腕(しろただむき)
  枕(ま)かずけばこそ 知らずとも言はめ
とうたひたまひき。              (仁徳記)

 仁徳天皇は鳥山に続けて丸迩臣口子をお遣わし
になって、歌を歌わせなさにるには、
 御諸山の その高い城にある 大猪子の原
 大猪子の腹にある 肝臓と向き合っている
 心だけでも 互いに思い合うこともないのであろうよ
とお歌いになった。又お歌いになるには、
 つぎねの生える 山という山背の女が
 木で作った鍬で 耕して作った大根
 その根の白いように 白い腕を
 枕にして寝ることもなかったとすれば、
 知らないといいもしようが、
とお歌いになった。