ちからしば

ここに挙げた写真は人のあまり入らない山道に生えているちからしばであるが、人に踏まれてもしぶとく頭をもたげる草である。子供は悪戯に、道に生えたこの草の葉を縛っておくことをしたものである。危ないと言えば危ないのではあるが。

     寄物陳思
疊薦 へだて編む数 通はさば 道のしば草 生ひざらましを(十一ー二七七七)

  寧樂の故りにし郷を悲しびて作る歌一首 短歌を并せたり
やすみしし わご大君の 高敷かす 倭の国は 皇祖の 神の御代より 敷きませる 国にしあれば 生(あ)れまさむ 御子のつぎつぎ 天の下 知らしいませと 八百万 千年(ちとせ)をかねて 定めけむ 平城の京師(みやこ)は かぎろひの 春にしなれば 春日山 三笠の野邊に 櫻花 木の晩こもり 貌鳥(かほどり)は 間なくしば鳴く 露霜の 秋さり来れば射駒山 飛火が嵬(たけ)に 萩の枝を しがらみ散らし さ男鹿は 妻呼び響む 山見れば 山も見が欲し 里見れば 里も住みよし もののふの 八十伴の男の うち延(は)へて 思へりしくは 天地の 寄り會ひの限 万代に 栄え行かむと 思へりし 大宮すらを 恃(たの)めりし 奈良の都を 新世(あらたよ)の 事にしあれば 大君の 引のまにまに 春花の うつろひ易(かは)り 群鳥の 朝立ちゆけば さす竹の 大宮人の踏み平し 通ひし道は 馬も行かず 人も往(ゆ)かねば 荒れにけるかも
  反歌二首
立ちかはり古き都となりぬれば道の芝草長く生ひにけり(六ー一〇四八)
なつきにし奈良の都の荒れゆけば出で立つごとに嘆きし益(まさ)る(六ー一〇四九)

故郷和田山町の谷間であるが、霧雨を受けて明るく見えるちからしば

いずれも和田山町の室尾峠のちからしば